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西荻窪の家

2012

「広い庭がある」ように見えるが、そうではない。庭の殆どの部分が敷地外なのだ。現在、都内の新築住宅で広い庭を確保することは非常に難しい。実はこの住宅の建蔽率も限度に近い。

 元々、最初に設計の御依頼を頂いた時は、現在の敷地面積の約3倍の大きな敷地に建つ、築40年の木造住宅を改築しようとする計画であった。その後、敷地はクライアントの3人の御兄弟で分割されることとなり、私のクライアントは元の3分の1の敷地にご自分だけのコンパクトな家を建てることに変更された。その結果、残りの3分の2は当面の間、庭として残されることとなったのだ。

 家自体はクライアントが退職後の生活を満喫するためのもの、個室は不要で、食べる、くつろぐ、寝る、少し本を読む、などのための空間がなんとなくあれば、全体はガランとした大きな箱でよいとのご要望だった。そこで、大きな矩形の建物形状の中央に階段を置き、その位置付けによってプランニングを行い、階段上部からの光が四方に柔らかく広がるような空間構成を考えた。

 階段の向きと位置は何かの軸線に合わせたものではない。浴室の大きさ、洗濯機の前の通路の余裕、1階東側の通路幅、ダイニングの広さ、書斎と寝室の大きさ、これらが全て収まる丁度良い位置を見つけようと、試行錯誤を続けた結果である。

 構造は、1階を鉄骨造、2階を木造とした。これにより、1階では南側および西側の大開口が可能となり、南側ウッドデッキとリビングの空間的連続、そして西側の広々とした庭への眺望が確保された。

鉄骨造の1階の上に載せられた「木造平屋」である2階は、柱が外周部のみで成立しうる構成となったため、階段の位置が自由になり、そのために前述のような設計手法を取ることができた。上部からの光を拡散させる階段周囲の半透明の壁も、柱に邪魔されることなく可能となった。どちらも建物が小規模だからこそ可能となった解決である。

 

(新建築住宅特集 2013年2月号および9月号 掲載)

 

DATA

所在地 / 東京都杉並区西荻北
規模構造 / 混構造(1階鉄骨造・2階木造)、2階建て
主要用途 / 専用住宅
敷地面積 / 90.57㎡(27.45坪)
建築面積 /  43.23㎡
延床面積 /  84.14㎡(25.50坪)

施工     /  有限会社ワシン建築事務所

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